私たちの世界には、「戦争のスイッチ」がある。何かのきっかけでONになると、戦争が動き出す。歯車が回り、ベルトが滑り、殺戮が始まる。人が人を殺す。それが戦争だ。戦争だから許されるのだ。戦争だから当然だと思ってしまうのは、見るこちら側の戦争のスイッチがONになっているかれではないでしょうか。私たちに求められているのは、自分の中にある戦争のスイッチをOFFにして戦争を見ることです。戦火の絶えない世界にいるからこそ、いや、いつの間にか自分が戦争の当事者になっている世界に生きているからこそ、その精神と技術が必要なのではないでしょうか。キャパにはそれが可能でした。それは、彼が戦争ではなく、人間を撮っていたからです。戦場の最前線にあっても、彼はOFF WARの状態にいました。彼のレンズは敵と味方ではなく人間を見ていたのです。本展のタイトルは、キャパは最前線においても自分の心をOFF WARの状態に置いて、戦争という現象の奥にある本質を見ていたということから来ています。同時に戦場以外の戦争のないキャパの写真作品にこそキャパの人生と作品の真のテーマがあるのでは、という二つの意味から来ています。 |